ハンカドールの生地へのこだわり

こんにちは、代表の石橋です。現在のハンカチドールは4人のプリンセスです。エレガントプリンセス、クールシンデレラ、キュートフェアリー、ナチュラルガール、それぞれのキャラクターには個性やおすすめのプレゼントシーンがございますが、今回はプリンセスのドレス(ハンカチ)に使用される生地へのこだわりについてお話したいと思います。

 

エレガントプリンセスとクールシンデレラ

まずは、エレガントプリンセスとクールシンデレラです。彼女たちのドレス(ハンカチ)生地ですが、表地は桐生織です。タテ糸はシルクでブラジル産6Aの絹糸を使用しております。シルクの糸ですが実はブラジル産が一番良いと言われております。ブラジルに移民した日本人が養蚕を広めたブラジル産の生糸で、桐生産地では世界的に有名なハイブランドの服地やネクタイ生地に使用されております。6Aというのはシルクの糸のランク付けで2A〜6Aの等級で最上位の品質で、5Aと6Aで全体の10%しかない希少なシルクになります。高速の織機で織物を織る際、一般的な3Aクラスのシルクの糸をタテ糸に使用すると毛羽立ってしまい綺麗に織れないのと切れやすく生産効率が悪いため、このような高品質のシルクの糸をタテ糸に使用しております。当然、織物としての風合いや光沢などの品質にも大きく関わってまいります。
ヨコ糸は綿の80番手の双糸という規格の細い綿糸を使用し、密度を高めることで柄の表現を美しく再現出来るようにしております。

エレガントプリンセスの生地には薔薇の模様、クールシンデレラには小花の模様がさり気なく地模様として入っております。この模様を表しているのが桐生織の技術です。桐生織はあらかじめ染めっているタテ糸とヨコ糸の組織変化で柄を表現するジャカード織りで、先染め紋織り(さきぞめもんおり)とも呼ばれます。この技術は、タテ糸とヨコ糸が交差する点で柄を表現するのが特徴で、交差する点(ドット)を組み合わせて柄を構成します。ドット絵をイメージして頂けるとわかりやすいかと思います。
柄を綺麗に表現するためには小さいドットがたくさん必要になりますので、糸が細くてたくさん打ち込んでいる織物のほうがドットが細かいため柄が美しく再現できます。デジタル画像の解像度が高いほうが美しい写真になるのと同じです。

ただ織物の場合、素材としての機能がありますので、あまり高解像度ですと生地が固くなって使い心地が悪くなってしまいます。ですので、この糸の密度と風合いのバランスをとって製品の生地としての完成度を高めていくのが、織り場の職人の腕の見せどころとなります。
とくにタテ糸とヨコ糸を組合せの柄を設計する意匠(いしょう)と呼ばれる職人さんが起点となるため、意匠さんの感性や経験値、勘所がその後の工程に大きな影響を与えます。この柄の設計には1300年の歴史をもつ織物の産地に脈々と受け継がれるノウハウや情報、職人の高い意識が生きてくるわけです。

織物工場の様子

エレガントプリンセスとクールシンデレラのハンカチ生地は、あえてタテ糸の密度を粗くしております。そうすることでヨコ糸を柄の表現に合わせて繊細に使いながら、全体の糸の目付けを押さえて、高密度でありながらも優しい風合いを出しております。また、人と同じ動物性たんぱく質の成分であるシルクと吸湿性、吸水性の高い綿の組み合わせにより、肌に触れたときのしっとりとした優しい感触とともに水分や汚れを拭き取りやすくしております。シルクには抗菌作用もあるため常に生地を清潔に保つといった効果もございます。ただ、シルクはシワになりやすい性質があり、少しメンテナンスに手間をおかけすることになってしまいますが、それには代えがたい風合いがお楽しみ頂けます。

本来、ジャカード織りは糸が先に染めっていて、いろいろな色の糸の組み合わせにより奥深い色柄の表現が特徴の織物生地になりますが、エレガントプリンセスとクールシンデレラでは糸の色は白のみで織っておいて、後から色を染めております。
ジャカード織りとしては邪道と言われそうですが、色には拘りたいがためあえてそうしました。というのも、先に染めっている糸を使用する場合、希望の色の糸があれば良いのですが、無い場合は希望の色の近似色になってしまいます。また、タテ糸は白または黒い色が基本となり、そこに希望の色のヨコ糸を打ち込んで織ってみてもタテ糸の色が微妙に干渉して、織物として仕上がったら思ったよりも色のトーンが変わってしまったなんていったこともあります。

通常、織物を製作する際、まずは柄の型となる紋紙(もんがみ)と言われる型データを制作致します。(昔はデータではなく意匠紙(いしょうし)と呼ばれる紙(パンチングカード)でした。)その後、試織(ししょく)と言って試し織りを行います。エレガントプリンセスとクールシンデレラの生地の試織をした際、最初は先に染めっている糸を使って織ってみたのですが、どうしても色がイメージと異なってしまいました。織っている織物工場では400色もの糸があり、幾つか配色パターンを織ってみたのですがイマイチ納得できず、これは邪道と言われても構わないので、白で織って後から色を染める方法を選びました。そのため、桐生市内の織物工場で白い生地を織って頂いて、同じく市内の染色工場さんに持って行って色を染めて頂くことにしました。

柄についてですが、エレガントプリンセスは少し大きめな薔薇柄にし、クールシンデレラは小さめな小花柄としました。これはエレガントプリンセスは大人の女性向けに、クールシンデレラはウェディングを意識しておりましたので30才前後の女性向けにシンプルにしました。ちなみに、商品コンセプトは中世ヨーロッパの美術や服飾で、この時代のデザインをオマージュしております。桐生織はジャカード織りの技術ですが、ジャカード織りはヨーロッパで盛んに織られ、中世の頃から壁紙や服飾にはふんだんにその技術が使われておりました。1800年にフランスのジャカールが開発したジャカード織機をいち早く導入し、世界に広めたのが桐生と言われており、ヨーロッパの織物と桐生の織物は共通項が多いことから、桐生織の技術でヨーロッパの服飾文化を表現したく、エレガントプリンセスとクールシンデレラのデザインが誕生しました。

織機

 

キュートフェアリー

キュートフェアリーはとくに桐生織ということではございませんが、広幅シルク生地の産地である福島県の機屋さんから仕入れさせて頂いております。キュートフェアリーのデザインコンセプトはフェミニン、可愛いですので、これを表現するためにシルク綿ローンと言われるとても軽くて薄い生地を選びました。シンプルな平織りの織物ですが、シルクの光沢感とシンプルな素材感により生地のドレープが美しく、キュートフェアリーのデザインの特徴であるフリルを綺麗に可愛く表現することが出来ました。
生地が薄いため2枚に重ねて使用しております。ただ、平織りの生地を2枚重ねると不規則に木目のような模様が現れるモアレと呼ばれる現象が起きてしまいます。印刷業界ではあまり好ましくないようですが、アパレルではブランドによっては意図的にデザインの一部に取り入れることもあり、ローズプードルでもそこは容認することにしました。結果、キュートフェアリーのデザインの中で、さり気ないモアレ現象が生地の表情に奥行きを出しており、シンプルで可愛らしい中にも高級感を醸し出す演出効果を生み出すことが出来ました。
生地のもともとの色は白ですので、エレガントプリンセスとクールシンデレラと同様、桐生の染色工場で後から色を染めております。

 

 

ナチュラルガール

ナチュラルガールはオーガニックコットンです。オーガニックコットンは農薬を使わず環境に配慮して栽培された綿から作られた生地です。持続可能な開発目標SDGsを積極的に取り組んでいる生地メーカーさんから調達しております。ローズプードルの理念は「For joy 〜喜びのために〜」。皆様に喜びを提供するために何かを犠牲にしてはならないといった考えがあり、事業活動を通じて社会問題、環境問題に向き合い、人や環境に優しい製品プロダクトを心がけております。

綿はインドで栽培されております。その作業には多くの子どもたちが関わっており、児童労働が問題となっております。子どもたちが自由に遊ぶことも出来ずに働いている状況の改善を支援するプロジェクト「ピース・インド・プロジェクト」に認定NPO法人ACEを通じて寄付を行える支援の輪が業界に広がりつつあり、意識が変わりつつあります。ローズプードルもその取り組みに賛同し、その証としてナチュラルガールを購入すると10円が「ピース・インド・プロジェクト」に寄付される仕組みをとっております。
ナチュラルガールのデザインコンセプトは自然派で癒やし系。自然な風合い、色合い、使用感がよく、レースの装飾部分も綿100%ですので通常の洗濯機によるお洗濯で大丈夫です。全てに優しさが感じられ、コンセプトを表現することができました。

 

織物、繊維の町で生まれたハンカチらしく、至るところに思いがございます。今後さらに桐生らしいアイデアを盛り込んだハンカチドールを誕生させて行きたいと考えております。

 

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